5.十二月二十九日 Version2
「……馬鹿、お前がそんな顔をすることはない」
デストロンの名に結城が目を伏せるのに気づいて、風見は少し困ったように表情を和らげた。そのま
ま思い出したように視線を巡らせ、自分の上着がソファの背にかかっているのを見つける。
「結城、俺の上着取ってくれ」
結城はいぶかしげに風見とその上着とを見比べた。
「取ってくれ」
枕に頭を埋めたまま、風見は笑って繰り返した。
不承不承荷物を置き、上着を取ってベッドの傍に戻る。無言で差し出しながら自分を見ようとはし
ない結城の目を見上げると、風見は毛布の内から手を伸ばした。
そのまま上着の下をくぐらせ、素早く結城の右手首を掴む。
「……?」
「やれやれ、手間をかけさせる」
空いた方の手で少し苦労しながら上着を取ると、風見は満足げに首筋を伸ばした。
「……僕は帰る」
「帰ればいいだろう?」
意地悪く言い返す。
「右腕を俺のところに置いて帰れるならな」
☆
《完》