パラダイスロスト(3)


     六

 何を思うともなく見やった海の色が、静かに心に沁みる。世界中を回っていても、やはり一番懐かしく思うのは、この日本の海の色かもしれない。
 そんな事を考えながら、またしばらくは帰ってくる事もない別荘の鍵をかけている本郷の手はどこか上の空に動いている。
「本郷」
一文字に呼ばれて、ふと我に返った。
「…ああ、隼人か」
「隼人か、ってなあお前」
両手を広げて溜息をついてみせ、一文字はそれから探るような目で本郷を見た。
「…悪趣味だぞ」
何を言われているのか判っていたから、本郷も微苦笑を返す。
「まあどっちもあれだけ気を張られちゃ、嫌でもこっちまで思考波が飛んできちまうがな」
つけ加えて、一文字はそれから奇妙に案じるような表情をした。
「あれでいいのか?」
「何がだ?」
「うーん、何がだろうな」
聞いておきながら自分の方が困ったような顔になって腕組みする一文字に、本郷はふと微笑する。
 少し離れたところに居るらしい後輩達の会話から溢れる思念は、風にのって痛い程本郷の心にも流れ込んで来ている。それは聞こうとしている自分ばかりでなく、あえて傍観しようとしている一文字にも否応なく届いているだろう事も判っていた。
「…風見にはもう話したと思ってたぞ」
ようやく言葉を選んで、一文字がぽつりと呟いた。それには答えずに、本郷は遠くへ視線を向けた。
 自分達はどこへ向かおうとしているのだろうか。

(くれぐれも深追いはするな)
パペーテ近郊のアジトから結城に連絡した時は、まだ解かれていなかった変身だった。
 結城の言う「心当たり」は解らないながらも、とにかくこれでは人目につく―――と解除しようとした変身が、しかしなかなか解けなかった。
 それと似た感覚は、既に何度か体験していた。まだ戦闘が終わってはいない事を、仮面ライダーの本能が察知して外骨格を解かせないのだ。その現実の暗示を意識で捩じ伏せ、半ば強制的に変身を解いて本郷はバイクを駆った。とりあえず、まずはあの海岸へ向かおう、と車一台行きあう事のない夜明け前の道路を走らせていた途中に。
 何が触れてきたのか、当の本郷自身にもはっきり説明はできなかった。
 そもそもその感覚自体が、科学的に立証されてはいないのだった。だが数年前―――思えば仮面ライダーの戦いが、ただ一人の宿命でなくなったあの日から―――感知できるようになった感覚は、本郷のみならず一文字や、直系の後輩である風見にも共有されている。
 とはいえそれと同じものを、全く異なった成立に拠る半改造人間に感じる理由はない筈だった。しかし現に、受けとっているその感覚で本郷は動いていた。確かに一度は来た事のある海岸である。だが足を踏み入れた事もない岩場に登って隠された入り口を探し当てたのは、自分でもまるで誰かに導かれているような迷いのなさに思えた。
 その少し前に本郷に踏み込まれたアジトから出発し、潜水艦で工場に向かっていた一団とは地下埠頭で遭遇している。戦闘員クラスの一群に本郷が苦戦する筈もなかったが、彼らがこの工場に「受け取りにきたもの」と、先に侵入している筈の青年の姿がないのに何か嫌な予感をまた覚えた。
 まさか自分が出遅れて、敵に連れ去られた訳でもないだろう―――という奇妙な確信も、その一方であった。どこかで本郷の意識に作用してくる感触は、まだ埠頭内に残っていた。しかしその気配はおぼろげで、工場のありとあらゆる場所を探した挙句、ようやく本郷は結城を発見した。
 もう少し潜水艦の停止位置が深かったら、別の意味で手後れになっていたかもしれなかった。
 海底に沈められていた復元機が邪魔になって、それ以上埠頭の奥に入れなかったのだ―――という偶然も作用したのだ。
 重傷を負い、結城は埠頭の防波壁にその身体を預けていた。右腕一本で水中の身体を支えながら、しかし既に意識はなかった。

 結城を宿まで運び、応急手当のできる道具を探している途中で、本郷は結城のファイルを見つけている。
 何を考えて書き溜められたのかは、今も本郷には本当のところは解らない。
 ただファイル一冊分書き込まれた設計に、本郷は確かに自分の深い部分で共振する感覚を覚えたのだ。科学者としての業と、同時にその被害者となる事の矛盾と、そしてある意味それをも肯定しようとする覚悟にも似た決意を。
 それも錯覚と言われればそれまでだった。
 しかし覚悟を確認するべき相手は、本郷の目の前に横たわっている。
(あの時と同じだな…)
自分を改造人間にしてくれ、と詰め寄った後輩を一度は諌めながら、その命を救う為に自分達が選んだのは、かつての戦いの中で知る事になった自分達の身体のメカニズムを転用して更に優れた改造人間を造り出す道だった。
 後輩が独りになっても負けないように。
 その命を今救う為だけでなく、この先も守る為に。
 ダメージを受けた生体部分を切除し、機械に置き換えていく作業に自分の身を切り裂くにも似たいたみを覚えながらも、あの時も本郷は迷わなかった。迷う事で後悔するよりも、その結果を自分の責任として生涯背負って行こう―――とどこかで決意もしていた。
 何故なら自分自身、この道を後悔してはいないのだから。
 ファイルに記された設計を理解するのに、それ程時間はかからなかった。ショッカーの流れをくむデストロンの科学技術は、その記述方法も継承されている。しかし従来の改造技法とは全く異なった切り口から立てられた計画は一朝一夕に考えられたものではなく、全体像を完全に自分のものにするのには少し時間が必要だった。そしてもしファイルに記された計画を完遂しようとするなら、自分一人の執刀では到底一度に完了できない大手術になる筈だった。
(…とりあえず、ダメージの大きい左腕だけ処置するか…)
気味の悪い程の偶然だ―――とぼんやりと思った。
(結城くん…君はまだ本調子じゃない)
あの時、自分は何か既視感めいた感覚に危惧していたようにも思うのだ。
 自分一人がどんなに力を尽くしても、それでも守り切れないものはある。それが時に、同じ名を持つものを造り出す事になる皮肉を、本郷は嫌と言う程味わってきていた。本郷のささやかな思惑など関係なく、むしろそうなる事が約束されていたのだ―――と言いたげに、運命は彼の元にその名に連なる後輩を、彼の手を下させようと届けてくる。
 自らに続く名を目の前の青年に贈った後輩の事を、かすかに思った。
(もし、風見がこの場に居たら…)
どうするだろうか、と思いながらも本郷の意志は定まっている。
 自分もあの時、存在する筈のない感覚を捉えたのだ。それがどんな意味を持つのかは解らない。ただ本郷は、自分の感覚を疑う事はなかった。

「…いいんだ」
本郷は呟いた。
「何がだ?」
「全部。これでいい」
悔やんだり、自分を責めずに生きていく事は、この先もきっとできるまい。
 けれどそれぞれのいたみと追憶を抱え、それでも自分達は歩いて行く。
 歩いて行けるのだ。
「隼人」
うん?と振り返る一文字に、本郷は笑いかける。
「お前が居てくれて良かった」
自分が一人ではない事の、心強さと悲しみを。
 初めて共有できた相手がこの一文字だった事でどんなに自分が救われてきたか、きっと当の本人には解ってはいないのだろう、と本郷は思う。
「何を改まって」
一文字は軽く肩をそびやかした。
「お前となら、地獄迄だってつきあうぞ」
地獄と来たか、と本郷は苦笑する。
「それじゃ行くか、隼人」
「え、地獄へか?」
「…おいおい」
ひょっと目を丸くする一文字に、本郷は思わず笑い出しそうになる。
「生憎だが地獄でも天国でもない。おやっさん所さ」



     七

「…それじゃ、本郷さんも俺に黙ってた訳だ」
風見の語調は静かだったが、怒っているのは背中を向けていても解った。
「そう頼んだのは僕だ。いずれ僕からきちんと話をするから、それ迄は君には知らせないでくれるように」
どうだか、と風見の唇が動いたようでもあった。
「…済まない」
経緯はどうあれ、風見に黙って事を運んでいたのは事実だった。素直に謝って、結城は海へ目を向けた。
 潮騒が、遠く耳に寄せてくる。日本の海は明るくてもどこか色がやわらかい。南の海の、染まる程の鮮やかな青とつながっているのが、ふと不思議にも思えた。
「腕だけか」
考えている内に何か思い当たるところがあったらしく、ふいと風見が声を上げた。
 相変わらず容赦ないな、と結城は内心苦笑する。
「…まだ、な」
「まだ?」
向き直った風見に、結城もまっすぐに視線を上げた。
「…両腕の揃った状態でのデータもこの戦いの前には取れていたから、いよいよ設計通りに進めても良いと、やっと本郷さんも言ってくれた。本当は先月済ませる予定だったんだが、今回の事があったからな…調整が間に合わないと何にもならないから、見送っていたんだが」
「何を」
「来月に本郷さんと」
つと視線を落とすと、結城は膝頭を軽く押さえた。
「両足の膝から下の改造を済ます事になってる」
それはつい一ヶ月前に、ようやく得た許可だった。
(…それが結論か…)
独りごちるように呟いて、自分を見た本郷の目がふと思い出された。まだどこか案じるようだったそのまなざしを思う度、自分はまたこの人をも傷つけているのだと結城は思う。自ら手を下す事の重さを、味わうのは一度で充分の筈だ。
 そう思いながらも、結城はもう止めるつもりもない。
 誰に反対されようとも、時にはその決断が誰かを悲しませるものであっても、途中で止める方が既に不実な事になってしまっているのだ。
「止めろ」
ひどくぶっきらぼうだが子供のような風見の物言いに、結城の唇はあやうく緩むところだった。
「そうはいかない。…大体君が、それを僕に言うのか?」
「何?」
凄みを潜めてねめつけた風見を、結城はまっすぐ見据えた。
「敵はどんどん強力になっていく…それに対する為に、僕らに出来る事があるのは、君自身が良く解っている事じゃないか。…だから」
その先は、言葉にはしなかったが。
 ふと見やった先に、どこか手持ち無沙汰に遠く水平線を眺めている神敬介が堤防の突端に座っていた。瀕死の重傷を負い、実父によって機械改造されたその身体は仮面ライダーの内で最も苛酷な環境にも適応できる。自らの命と引き換えるように、最後の力をこめて父親が成した改造である。
 そして風見もまた、そんな後輩の再改造に手を貸すべく密かに奔走していた。とあるきっかけで神教授の旧い知己と知り合った風見は、その後更に深くかかわる事になった事件の中、彼らの過去の共同研究のいわば神髄とも言うべきある回路の秘密をついこの間まで追っていたのだ。
 熾烈を極める戦いに負けないように―――と願う事は、そのまま彼らをより人間からは遠い存在に変えていく。
「…あれはいいんだ」
結城の視線を追って思い当たったらしく、憮然と呟いた風見の言い分は理屈になっていない。
「同じ事だろう」
それでも誠実に対したいと思う。
「…なあ、風見」
だから自分が考えた末に、辿り着いた結論はここで話しておこう―――と思った。
「人間の身体は、結局全身のバランスがとれていないと駄目なんだ。右腕だけを強化しても、その力を身体の他の部分が支えきれなければ、バランスを失っていずれは自滅する。それを避けようとするなら、改造部分の力を本来よりも低めに加減して折り合いをつけるしかない」
それがタヒチで結城を悩ませていた問題の答だった。
 通常時は普通の人間とさほど変わらない力だが、変身後は最大の力を発揮するように設計されていた筈の右腕が、何故期待値よりも低い力しか現せなかったのか。
「強化服で緩衝できる程度の力止まりになるように制御する事で、右腕の…いわば暴走を抑えていたんだ。だがそれでは、改造強化そのものの意味がなくなる。どちらでも駄目なんだ」
「だから?…しまいには全身機械にでもする気か」
「それが僕の結論だ」
真面目に答えた結城を、風見は再び睨みつけた。
「いい加減にしろ。左腕は仕方ないにしても、これ以上…お前のやろうとしてる事は」
一瞬言い淀んだが、思いきったように言葉を投げつけた。
「お前はまだ、普通の人間に近いんだ。だのに普通の人間とは違うものに、どうして自分から進んでなろうとする…」
これでは逆だな、と結城はふと思う。彼らしくもない風見の惑乱に、冷静に対している自分が不思議だった。
「僕は何も恐れていない…」
言いながら、風見の瞳に奇妙な哀惜の色が浮かぶのを結城は見ている。
 それは結城への―――というより、もしかすると風見自身の、惜しむ暇すらなかった生身への哀惜なのかもしれなかった。
(この身体は…)
不意に思い出すのは、お互いに初めて素顔で対した時の事だ。デストロンが数十人の改造人間を差し向けても倒す事の出来なかった無敵の改造人間、仮面ライダーV3―――風見志郎の、感情を押し殺した瞳に宿る光と共に、あの時言われた言葉も今なお鮮やかに甦る。
(脳以外は全て機械だ…)
家族やそれまでの幸せな生活と共に、デストロンは風見の生身の身体をも奪ったのだ。死と引き換えに選んだのは、決して破壊されない無敵の身体となってデストロンと戦う事だった。
 それを悔やむ事もないのだと、風見の透徹の瞳は語る。けれど不思議とその時の風見はやり場のない哀惜を堪えていたようにも思うのだ。風見が自分に向ける感情には、そんな癒される事のない喪失感が滲む。
 だがだからこそ、言わなくてはならない事もあると思うのだ。
(お前はもう充分に償った…)
そんな言葉で赦してくれる友人に感謝しながら、けれどもあの時、結城はもどかしかった。
 おそらく自分は、もうデストロンにとらわれてはいない。
 半分にはそう思い込みたいのかもしれないが、だから自分が戦おうとするのは贖罪の為ではない。世界に迫る危機がある事を知ってしまった人間として、もう何も知らなかったような顔をして「知らずに守られている世界」には入っていけない。
(だが、お前は―――)
その先に風見が用意している説得を察せない程、結城も馬鹿でもない。だから自分であえてあからさまな言葉にするのだ。
(…僕は中途半端な改造人間だからな…)
片腕だけが機械で、他は生身の自分の戦闘能力の低さは解っている。しかしひとつには、その現実が自分に決心させた―――などと言ったら、この一見鉄面皮風の友人がどれだけ傷つくか解っているから、結城は口にしない。
 そこにはいつも、もどかしい矛盾がある。身体を造り変え、超人的な力をもって、いわば同類である存在からこの世界を護ろうとする。しかし彼らもまた、その護ろうとする世界に対しては紛れもない異形なのだ。平和な世界にあっては彼ら自身が異分子であり、決して相容れない存在である事を知りながら彼らはその「平和」に向かって命を懸けるのだ。
 自分達の存在理由すら脅かす、「平和」の為に。
 だからこそ、それでも揺るぎなく。
「…恐れずに、進んで行きたいと思う」
君のように、とは言わなかった。
 しかしそれで結城は、ふと思い出す。
「…そう言えば、会ったら聞いておきたい事があった」
「何だ」
風見はつっけんどんに答えた。
「離れていても、いつも君には僕の居場所が解っているのか?」
「……」
無言の答に、結城は笑って海を見やった。
「…そうか」
肩をすくめながら、少しその笑みはかげったようにも見えた。
 同じ名を持つ彼らの間に相互にはたらくその感覚で、風見は自分を感知できるのだと言われた。けれどこうして再会してみても、自分の意識に新しい感覚が加わった気配は何もなかった。
 それも考えてみれば当然か、と思った。意識ひとつで、そこまで便利になれる筈もない。風見の姿がこのまま視界から消えれば、どこへ行ってしまってもきっと自分には解らないままだろう。
 だがそれで不安になるだろうか、とふと自問してみた。
「…君に解っていればいいか」
「何?」
いや、と答えて結城は遠く海の彼方を仰ぐ。
「ならばどこまでも一緒に行くのと同じだな」
静かに甦るのは、あの日地上最後の楽園の海岸の風景だった。記憶の内で、小さな風車がきらきらと回る。
 その羽に享ける風は見えなくても。
 気がつくと、風見はまた歩き出していた。
「風見」
呼んでもその背中は振り返らなかった。
「風見」
背中を追って歩きながら、なおも声をかける。
「おい、風見」
「…少し黙ってろ」
苛々と遮られて、結城は肩をすくめる。言われた通り、黙って待っていた。
「…お前は馬鹿だな」
ふて腐れたような声は、しかしどこか遠く聞こえた。
 追いついて顔を見ようとすればきっと怒られる事が解っていたから、結城は黙って後から歩いていった。風見の柔らかな髪が風に揺れて、眺めている内に不意に切ない心持ちになる。
(だが君には、きっと誰の助けも要るまい…)
それも解っているのだ。
 他人には揺らぎを見せないまま、この背中はどこまで行くのだろう。
 おそらくはどこまでも行ける事を、自分も見届けたいのかもしれなかった。正義を信じるように、常に自分の視線の先に、揺るぎないものを見続けていたいのかもしれない。
「…来月と言ったな」
独り言のように、風見が呟いた。
「来月のいつなのか、早めに知らせろ」
「風見…?」
「俺も立ち会う」
ぽつりと言うと、それ以上有無を言わさない構えでついと振り返った。
「丁度その頃、一度こっちに帰ってる筈だ」
それが何の為なのか、風見は語らない。
 マーキュリー回路の完成は、イタリアで風見の到着を待つばかりになっていた。
 残された微かな感傷さえ、自ら断ち切って進んで行く。それを選んだのが自分なら、同じように決意しようとする者を自分には本当は止められない事も、どこかで解っていた気がした。
「…僕の為に君がわざわざ時間を割く事はない」
それでも相変わらず意固地に一線を引こうとする友人の言葉は、もはや自分にとって何の意味もないのだと知っているのだろうか―――と何がなしに思った。
「お前の為じゃない」
風見はふいと言い捨てて、遠い水平線を眺めた。
 自分の決意の行方は、勿論こんな形で確かめるまでもない。
 けれど少なくとも、これもまた自分の進んできた道に交わるひとつの指標だ。もしも迷って振り返ったとすれば、良くも悪くもその目印は風見の心の刻印を思い出させ―――再び、前へと向かわせるだろう。
 そんな幾つもの刻印を、風見は心に刻んできている。そしてその最初の傷跡は、あの惨劇の日迄遡って静かに風見を瞑目させる。
 あの日、確かに世界は一変したのだ。
 理不尽に訪れる最愛の者の死を、ただ成すすべもなく見つめていた自分の無力感は、今も心の一番深いところにある。どれだけその身体を強化すれば忘れられるのか、そもそも生きている間に忘れられるものかも解らないながら、ただ密やかに誓った。
 たとえもう戻る事はなくとも、この世界を守る事を。

 懐疑を越えて。煩悶を越えて。
 私怨とかなしみと孤独を越えて。
 それでも自分達が目指そうとする彼方にあるものは。

 遠くまなざしを上げれば、ただ海が眩しかった。



                                <完>


   








という訳で「回帰線」を出す時に「これだと『南国漂着譚』と『夏の帰郷』がつながらないな」と気づいて書き下ろしたのがこの話です。
「何故ライダーマンはXライダー劇場版で左腕にアタッチメントを装着していたのか」という疑問は割にたやすく「再改造説」に結びつき、
またその他にも諸々の事情がありまして、一応弊サークルとしては「ライダーマン再改造説」をささやかに提唱させていただいております。

もっとも「どうして再改造に至ったか」も「どうしてプルトンロケットから生還できたか」同様に「こういう話もありだよね」「あれでも
いいよね」などとあれこれ考えるのが楽しいので、この話が弊サークル基準設定という訳では全くありません。
それを言い出すとそもそもライダーマン再改造説に関しては「プルトンロケットの爆発で重傷を負い、ダブルライダーに再改造された」と
いう講談社の児童誌設定が存在しているので、その設定で「海を臨む日」最終話を書いたのが先だったりします。まだ再録してませんが(泣笑)
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