<今見るとしたら>
全130話を見ようとするならCSやケーブルTVでの放映が頼みなのですが、2003年時点で既にキッズステーションで2回放映されており、今後の再放映を期待するのは厳しいかもしれません。
DVDが2001年に日本コロムビアから「ブラック団篇」「マキューラ・まぼろし同盟篇」各4枚組で出ているので、主要キャラクターの初登場回やキーポイントになる話はこれでほぼ網羅できます。
折角のDVDセットなので全話収録して欲しかったところですが、これは我儘というものでしょうか。
また、1994年頃にKSSから「忍者部隊月光」「忍者部隊月光スペシャル2」のLDが、こちらは各2枚組で出ていたので16話まではこれで揃います。
その他1話と8話を収録のビデオがエスピーオーから出ていましたが、こちらはかなり昔の話なのでビデオレンタル店を回ったほうが良いでしょう。
ちなみに1964年7月に公開された劇場版「忍者部隊月光」が東映ビデオから出ています。これもレンタルを探した方が確実でしょう。
初めて「月光」を見る方にはこの劇場版をお勧めします。
<大まかなあらすじ>
国際連合と連携する諜報組織・あけぼの機関に所属する忍者部隊。
彼等は古来より伊賀・甲賀の忍法を受け継ぎ、更に近代の科学技術を取り入れた忍術を自在に駆使して現代に甦った忍者集団である。
あけぼの機関の指令を受け、月光(水木襄)を隊長とする忍者部隊は世界各地に赴く。世界征服を企むブラック団、
秘密結社マキューラ、まぼろし同盟等の陰謀を打ち破るべく、忍者部隊は今日も世界のどこかで戦い続けているのだ。
<偏った感想その他>
今に続く「戦隊シリーズ」の大元祖。
「チームを組んで戦う、という設定だけなら別に戦隊と関係はないんでは?」という御意見も勿論あろうかと思われますが、
戦隊の古典的な約束事とも言える「リーダー+サブリーダー+巨漢+年少者+女性」という基本的なチーム構成は、メンバーの入れ代わり等で揺らぎながらも
「〜月光」後期に至って微妙に確立されています。
ただ同じ原作者の手になる後の「科学忍者隊ガッチャマン」程には、それぞれのポジションが明確に固定されている訳ではないのも確かです。
まあ「リーダー」と「女性」は揺らぎようもありませんが。
殊に月光はヒーロー番組史上屈指の「リーダーらしいリーダー」と言えましょう。
伊賀・甲賀の忍法に通暁し、窮地に陥っても常に敵の裏をかく一手は忘れない読みの深さ。たとえどんな危地にあっても何があってもこの人と一緒なら絶対大丈夫、と信じられるのは
彼くらいかもしれません。体型的にまでだいぶ頼りがいがありそうなのだけが女心としてはやや難点ですが、まあそれはそれ。いや。男前でカッコいいです隊長。
「女性」も数人が入れ代わりますが常駐メンバーは必ず一人。三日月にしても銀月(加川淳子)にしても、昭和30年代らしい上品で凛とした美人なのが嬉しいところです。
しかし「サブリーダー」格に相当する「地味な職人肌」と「ニヒルな二枚目」の二人が、初期忍者部隊メンバーでは並び立っていた訳でした。
暗黙の内に第2位のポジションにいた月影が第18話で殉職し、月輪が事実上繰り上がりになったところでほぼ確定、というところでしょうか。
更に「巨漢」といえば満月(山本磯六)かもしれないけど個人的には流月(手塚しげお。「ワイルド7」の八百ですね)も性格的にはカテゴリー内だと思うし。但し両名とも番組後期「まぼろし同盟」編からのメンバーです。
「年少者」もぱっと見には半月で決まり!でしょうが、でも扱いを見る限りでは名月も初期は結構「年下に見られているところ」もあったりしますし。
と言う訳で、名月。あからさまな展開ですみません。
この番組がデビュー(祝)の山口さんは当時現役の高校生だった訳ですが、とてもそうは見えない大人びた風貌です。背もこの頃から高かったですし。
当初はモノクロ作品という事もあり、全員が同じ隊服同じヘルメットという画面ではまずどこに名月がいるのかを探すので正直一杯一杯でしたが、番組に慣れてしまえば後は簡単でした。
そしてヘルメットを取ると、前言と矛盾しますがはっきりと若いです。いやー。美しき哉十代。
何しろデビュー作なので、最初の頃は「ただ夢中で真面目に演じている」だけなのが前面に出ていますが、これが後半になってくると
「ちょこっと先輩風吹かしたりしながらも所詮はまだまだ」なところが現れてきたり「一生懸命やってるのにひょっと誰かに出し抜かれて口惜しがったり」と
「山口さんらしさ」が早くも垣間見えてきてこたえられません。
そしてこの番組通して見ると、結局第一話から最終話まで通して出たのは月光と月輪と名月だけでした。
途中で転出するメンバーや作戦の都合からか出たり入ったりするメンバーも数人いるので、全部殉職で入れ代わった訳ではないですが、番組開始から一年にして三名の殉職者数は
七曲署もびっくりの高率ではないでしょうか。「子供向けにしてはハードな内容」と良く番組紹介に書かれる所以です。
「…でもそれって最初だけだったでしょ?」と呟いた貴方は、この番組後半まで見てますね?
「そう言えば『ゴレンジャー』も初期と後半では随分趣が変わってたな…いやしかし『ジャッカー』よりは」などとついまた戦隊シリーズに思いを馳せたりもしますが、
「月光」も話数が進むにつれ基本的な空気は残しつつ、段々と初期のハードさは影をひそめてきます。あけぼの機関の指令を受けて世界各地の紛争解決に出かける部隊が、
何故その辺で遊んでいる子供のもめ事に介入して秘密組織の謀略に辿り着くか、と言う気もしますが、これも長期番組の宿命とでも呼ぶべきでしょうか。
そこで「最初の頃はあんなにシリアスだったのに」と思い返そうとして、ふと思い出す訳です。
…確かに話こそシリアスでしたが。
第1話で殉職した月明(広川太一郎)がその後も堂々と「忍者部隊の訓練場面」に現れていたり、容赦ない銃撃に晒されている死体が腕をこっそり上げて砂埃が目に入るのを避けていたり、
今から見ると「え?」と思うような映像もまた確かに「月光」という作品の構成要素だったのでした。
作り手や当時の視聴者層からすれば「そんなところ見所と違う…」とも思われましょうが、断じて馬鹿にしたりしている訳ではないです。
あくまで全力で真面目に作りつつ、同時にそんなTV黎明期の大らかさを含む。かけられるお金や環境の制限される中で作られたであろう映像は、
つつしみ深くストイックでありながら、時として大胆な表現で見る側の意表を突いてきます。
つまり「月光」の作品世界そのままに。
そしてその世界は、今となっては決して真似る事のできない理念と希望に支えられていて「子供に見せるもの」を作る上での志の高さすら感じさせられます。
正義の味方はあくまで正しく揺るぎなく、悪役側はどこまでも己の所業を恥じる事も迷う事もない。
科学は正しく使えば必ず人類の明るい未来の為に活かされるものであり、1人1人が心掛けていればいつかは平和な世界が実現するのだと、まだ信じる事のできた時代の空気が漂います。
そう言えば舞台が世界各地(しかしどう見てもロケ地国内・それも首都圏)だったのも実は最初の頃だけでしたが、第37〜40話の「香港一号作戦」「香港二号作戦」では香港ロケが行われています。
物語上での「いや別に、国外活動なんて忍者部隊には珍しくないんだけどね」なポーズとは裏腹に、「本物の香港だ!気合い入れて撮るぞ!」な喜びが画面から滲み出ていました。
この話はDVDにも収録されているので、60年代の香港の風景に興味のある方にはお薦めしておきます。近年の香港の風景とは隔世の感があります。
勿論それは東京も同様で、特に番組後期に入って描写の増える町の風景や子供達に、この40年近くの変遷を思うもまたこの番組の楽しみ方の一つかと思われます。