1.十二月二十六日―――岩崎圭一郎
風見志郎は眠っていた。
それはあどけない子供のような眠りであった。
首元の白いマフラーを軽く緩めただけで着衣も解かず、ソファに斜めにもたれるようなひどく不自然な体勢の風見の横顔を、窓から射すまひるの白い光がぼんやりと縁取っている。しかしそんな眩しさを避けようともせず、開いた窓からの風が時折髪をなぶるに任せながら、風見はただひたすらに眠り続けていた。
デストロンに捕らえられかけた姉弟を頼まれもののついでに見舞って帰ってきた風見が、そのままこの眠りにおちて半日が経とうとしている。人の目にさらす事を嫌い、あえて日常と同じようにふるまい続けたものの、サイタンクに負わされた傷は仮面ライダーV3である風見にとってすら、既に身動きさえままならない程のダメージを与えていた。それでもその傷をおして戦い、サイタンクを倒して姉弟を守った今、風見はようやくその身を休める事を自分に許したのである。
改造人間となってこのかた、風見がこのような無防備な姿をさらした事はない。おそらく今デストロンの奇襲をうければ、風見とて無傷では済むまい。既に味方にすらできる限り自分の弱味は見せるまい、と決意している風見の、それはたった独りであるが故の安らかな眠りである。
しかしその静かな午下がりの光景の内に、もう一つの姿があった。
道路ひとつ隔てた古いアパートの白壁にもたれ、見上げるともなくその窓を仰ぐ長身の青年は、もう三時間あまりもその場所から動いていない。
黒いコートの肩をそびやかして腕を組み、たてた襟にその顔を隠すようにして佇んでいるその青年は、窓を見守っているようでありながら、それ以上窓に近づく事をどこかきらっているようでもあった。
実際どうしてそこに立ち続けているのかは、当の結城丈二本人にしても良くは解らなかったかもしれない。人に尋ねられれば、おそらく顔色ひとつ変えず答える事はできる―――デストロンを追うよりも、傷ついた風見の周りに現れるのを待つ方が効率は良い。そして風見が目を覚ませばまた必ずデストロンを追って動き出す筈だから、どちらにせよ闇雲に動き回るよりは確実なのだと。そんな答を誰に向けるともなく用意しながら、しかしそれが完全な答えではない事も結城は知っている。
長い惑いの果てに掴んだ真実は、結城がどこかで予感しながらも信じたくなかった結論だった。
そしてその時、自分の今迄の行動に対して生まれた深い負い目は、確かに結城の心に暗く影を落としている。
あるいはその為に、結城はこれ以上風見に近づけずにいるのかもしれなかった。しかしなお去り難く立ち惑っているその気持ちは、当の結城本人にもはかりかねている。
何故、とぼんやり自問しながら窓を見上げるその瞳の不安げにもやさしい光は、おそらく風見の見た事のないものである。というより結城自身も、自分がそんな目をしている事には気づいているまい。
少し眩しげに目を細めながら、ただ結城は久しぶりに心が和むのを感じていたのだったが。
―――ふと、その瞳が警戒の色を宿した。
視線を窓から外し、四方へゆっくりと巡らす。反射的に力の張り詰める右手を、左手で気配を殺すように押さえながら結城は足音を消し、じりじりと壁に沿って動いた。
誰かが壁の向こうにいる。
少しずつ近づいてくるその相手に気取られないよう息を詰め、壁の端迄来たところで相手が充分に近づくのを待って、結城は無言のまま素早く壁からはなれた。慌てて下がろうとする相手の襟元を捕らえざま、その鳩尾に一撃を入れようとする。
「!」
結城の目が大きく見開かれた。まさに突きを入れようとするその一瞬前で、かろうじて拳を止める。
「……岩崎!」
小さく叫ぶような呟きが、その唇をついた。
「結城……」
結城に襟元を掴み上げられたまま、まだどことなく少年の面差しを残したその青年は怯えたような目で笑ってみせた。
「…放してくれないか?」
半ばおそるおそる言われて、結城は慌てて手を放した。
青年は乱れた襟元を整えて息をつくと、目にかかる前髪をうるさげにかきあげた。そうするとこの青年が、結城より頭半分以上も小柄なのがわかる。やや三白眼気味だが大きな目の童顔の内で、広い額と神経質そうに尖った顎が、変にアンバランスな印象を見る者に与えていた。
「……これが久しぶりに会った友人に対する挨拶か、結城?」
屈託のない笑顔を向けられて、一瞬結城の顔に気まり悪そうな、照れたような表情が浮かんだ。
だがすぐにそれは消え、次の瞬間には厳しい警戒の表情が戻る。
「なんて顔してるんだよ、結城」
なおも笑いかけようとする青年の肩を捕えて壁に押さえつけ、結城は低く呟いた。
「お前までが僕への刺客に差し向けられる日が来ようとはな……思ってもみなかったが、考えついて良い筈だった」
「結城」
「でなければ何故、お前がここに居る?」
「待ってくれ、結城!」
小さな子供のようにせわしくかぶりを振り、青年は結城の手を掴んだ。
「そうじゃない……助けてくれ、結城!」
「何?」
押さえつけている腕の力が緩む。その手を縋るように握りしめて、青年は結城を見上げた。
「頼む、助けてくれ……追われてるんだ」
誰に、と尋ねかけた結城の目が、ふっとそのまま左へ向けられた。その視線に気づいて壁の向こうへ下がろうとするデストロン戦闘員の気配を認めるや反射的に青年を背に回し、構えをとりながら結城は振り返らずに尋ねた。
「……こいつらか?」
背に頷く気配をきくと、結城は拳を固め、壁の向こうへ声を張り上げた。
「―――出てこい。結城丈二が相手になろう!」
ゆらり、と影のように壁の向こうからデストロン戦闘員が姿を現す。
三人―――五人。
円を描くようにじりじりと取り囲む戦闘員との間合いをはかって二、三歩後じさりながら、結城は油断なく目をくばった。
「……結城丈二か」
中央の戦闘員が左右の仲間に目で合図を送って輪をせばめる。
「貴様も一緒とは好都合……と言いたいところだが、あいにく今日は日が悪い。その男を渡せば、今日のところは見逃してやろう」
背中にかすかに息をのむ空気が伝わる。力づけるようにしっかりと背にかばいながら、結城はきっと身構えた。
「そう言われておとなしく引き下がる僕とでも思っているのか。来い!」
「ならば力づくで貰っていくまでよ!」
ナイフを手に躍りかかってくる戦闘員を躱しざま手首をひねって壁に叩きつけ、続いて一人の足をすくって鳩尾に肘の一撃を打ち込むと、結城は壁と自分の背との間に青年を入れて体勢を整えた。なおもかかってくる戦闘員の腹に蹴りを入れ、前にのめったところを首筋に手刀をいれて昏倒させる。
五人の戦闘員を片付けるのに三分とかからなかった。ライダーマンに変身するまでもない。
「……結城」
まだ恐怖に唇を震わせている青年に微笑みかける結城の足元で、塵と化した戦闘員の残骸が風に舞った。
「……流石だな……」
その笑顔に力づけられたように、青年の表情に少しずつ生気が戻り始める。
「流石は結城だ……相変わらずの強さだな」
声の調子は、しかし変に甲高い。
「昔から、戦闘部隊の奴らに無理難題を吹っかけられる度に、いつも僕達を守ってくれたのは君だけだったな」
「止せ」
ふっと結城の目に寂しげな光が宿った。
「昔の事だ。……それよりも聞かせて貰おう、岩崎」
風が静かに吹き過ぎていった。その冷たさにもう一度コートの襟を立て直し、結城は青年を見下ろした。
「何故お前が、デストロンに追われている?デストロン科学者グループの一員である、お前が」
「それを君が僕に聞くのか、結城?」
かすかに哀しげな目で結城を見上げ、青年は答える。
「……脱走したんだよ、僕も」
「君達がデストロンを脱走してから、科学者グループへの風当たりは強くなる一方だった……」
遠くで子供の笑いさざめく声が聞こえている。
静かな公園の隅のベンチに座って、結城は岩崎の話を聞いていた。
岩崎圭一郎。
デストロンでの、かつての結城の同僚である。
年は結城より二、三下だが、生体工学にかけては卓越した才能の持ち主で、デストロンでは人体改造を専門にしていた。結城とは畑違いの分野だったが、改造手術の事で戦闘部隊に絡まれているところに結城が仲裁に入って以来、事あるごとに結城を頼ってくるようになったのである。
「科学者グループの中には、まだ君への好意が強く残っている。ヨロイ元帥はそれをきらって、科学者グループの弱体化を進めていったんだ。対抗できるだけの力のない僕達はどんどん発言力を失くし、今では完全に戦闘部隊の支配下に置かれてしまった……」
結城は黙って聞いている。
「もう今じゃ、誰一人声を上げる奴もいない。改造人間どもがでかい面をして威張り散らして、僕達に命令するんだぞ……僕達に改造された改造人間が。造りものの化け物が、人間に偉そうに命令するなんて、そんな事が我慢できると思うか?」
頬を紅潮させて喋り続ける岩崎は、その時かすかに結城の表情がかげったのに気づいていない。
(造りものの……)
手袋の右手が、わずかに岩崎の視界から外れるようにコートの下に隠れる。
岩崎は結城が脱走した時の詳しい経緯を知らない筈だ。
「奴らが自分達の身体性能を上げる為に指図する研究だけを、皆黙って続けている。でも僕はもう耐えられなくなったんだ」
かつてデストロン内の力のバランスは、ヨロイ元帥を頂点とする戦闘部隊と、結城をそのリーダー格とする科学者グループの発言力が平衡する事によって保たれていた。
しかしデストロンの脱走者となった結城を欠いた事で、そのバランスもまた失したのである。
「デストロンから逃げて……でもデストロンは追ってくる、僕を抹殺する為に。もう僕はどうしていいか解らないんだ。頼む、結城!」
岩崎はひたと結城を見上げた。
「僕を助けてくれ……僕を助けてくれるのは、君しか居ないんだ」
頼るように見上げてくるその目を、困ったように結城は見つめ返す。
(まだこれ以上、僕が負わなくてはならないものがあるというんだな、お前は……)
自分を逃がす為に殺された三人の助手の仇を討つ事を、唯一の目的と思い定めていた結城だった。しかし今、自分の行動の生んだ因果のひとつを目の当たりにして、結城は今更ながらにデストロンという組織に如何に自分が深く関わり過ぎていたかを知る。
(だが、それも僕の責任だと言うなら)
「解ったよ、岩崎」
その声は穏やかだった。
たとえそれがどれだけ重くとも、自分の責任である以上は目を背ける事も、逃げる事も結城にはできない。
「お前の身は僕が守ろう……お前がデストロンから脱走しなければならなくなったのも、元はと言えば僕の為だ」
まだ右手はコートの内に隠しながら、結城はまっすぐに岩崎を見た。
「僕も命を懸けて、デストロンと戦う身だ……僕と一緒に来るか?」
「結城!」
喜びに輝く岩崎の目は、結城にとっても懐かしいものである。
明晰な頭脳を持ちながらどこか子供のようなあどけなさと気弱さを持ち、いつもおびえたようなまなざしをしていたこの青年科学者が、研究の話をする時は別人のようなひたむきさで、憑かれたような目をした。
その一途さを危ぶみながらも同じ科学者として、結城は好ましく思っていたと言って良い。
岩崎の話を完全に信じてはいない自分に、結城は気づいている。
確たる証拠は一つもないのだ。しかし。
(僕一人、信じる分には構うまい)
子犬のような目でまじまじと見つめてくる岩崎に少し戸惑うような、しかし優しいまなざしを返して、結城はふっと何かを思うように肩をすくめた。
2.十二月二十七日―――風見志郎
「……あれだな」
立花藤兵衛はパイプをくゆらしながら呟いた。
「なんです?」
風見は少年ライダー隊本部のソファに腰を下ろしている。
まだ身体は完全に復調した訳ではないが、昨日一日眠ったおかげでとりあえず動く事だけはできるようになったので、今日は朝から本部に詰めているのだった。
「ここんとこ、ぱったり姿みせんな。……ほら、あの男」
誰の事か、尋ね返すまでもない。
「……そういえばそうですかね」
「おお、ほらクリスマスからこっち、全然影も形も現れんじゃないか。あれだけお前の行く先行く先うろちょろしてた奴が、一体どうしたってんだ?」
「別に。……俺にいちいち行き先言ってく奴でもないですからね」
答えながら、いくつ立花に黙っている事があるだろうか、と風見は自問する。
結城が何を見、何を知ったのかは風見とて知る由もない。ただ判っているのはあの青年が、あれ程までに信じようとしていたデストロンの実体を見定め、そしてデストロンと戦う決意をした―――という事だけである。
(だが、それでもまだ……一人で行こうとするのは)
サイタンクを倒した後、黙って姿を消した結城がふらりと現れたのは一昨日の夜遅くの事だった。
「あの姉弟に渡してくれ」
そう言って戸口でぬいぐるみの包みを風見に押し付けるように渡して、再び闇の中へ消えて行こうとする結城の背に、風見は聞いてみたのだ。
「どうして自分で渡さない?」
その問いに、肩ごしに困ったような―――しかしある種の諦めにも似た寂しげな微笑を見せただけで答えず、結城はそのまま立ち去った。その時の表情に、どこか後ろめたさのつきまとう影があったように、今にして風見は思い返している。
そして同時に思い出すのは、迷いながら自分に向かってきた時の、結城のまなざしの一途さである。おそらくまだあの時、結城はデストロンを信じていた。もしかすると、という理性の声に耳を塞いで、なお信じようとしたものの実体を見てしまったいたみがいかほどのものであったか、風見には知るすべとてない。しかしそのいたみが、どこかで結城を傷つけているのではないか、と風見は思っている。
知らなかったとはいえ、悪の組織に与していた事の罪悪感。償いをさせてくれ、と言った時のあの必死さは、重い自責の念の裏返しである。
正義に目覚めながらも同時に悪の組織の一員であった事を悟ってしまったその為に陽のあたる場所を避け、ただ独りで歩いていく事を自らに課しているとしたら。
(結城……)
そしてそれを思う時、何故か風見にはもうひとつ思い出される気配がある。
冬の午下がりの白い光の内。サイタンクとの戦いで傷ついた身体を休める深いまどろみの、その内ですら風見にはほんの僅かに覚めた意識の一部分があった。ひたすらな眠りに引き込まれようとする内で周囲の空気を本能のように探ろうとするそのささくれだつ意識に、しかしその気配はそっと穏やかに触れてきた。
それは離れたところから、静かに見守るまなざしに似ていた。近づく事も遠ざかる事もなく、一定の距離をおいたところから黙ってただ自分の眠りを守ろうとする意識―――それは不思議と風見を心安らがせ、常に「守る者」たる事を宿命づけられた彼の、最後の緊張を解き放った。改造人間となってから初めてといって良い前後不覚な眠りに、風見はそのまなざしにまもられておちた、ように思う。
そして窓から忍び込む夕闇の冷気に目覚めた時、すでにその気配は風見のまわりから去っていた。それが誰だったのか、風見には知る由もない。
しかし。
「……お前、妙につっかかるなあ」
立花は宥めるような、人の良い笑みを浮かべた。
いつの間にか、ひどく厳しい表情になっていた自分に気づいて、あわてて風見も表情を和らげる。
「まあ、何もなけりゃあ別にどうだっていいんだが……ほら、あの男えらく強情で、一人で突っ走るタイプだろう。デストロンに立ち向かおうとして厄介な事になってなけりゃいいんだがな」
否定とも肯定ともつかない曖昧な微笑で答えて、風見はふと近づいてくる足音に耳をそばだてた。
「―――ただ今帰りましたあ」
両手一杯に買物袋を抱えた珠純子が、歌うように言いながら入ってくる。
「お正月の買物してたら遅くなっちゃって。……会長、言われた通り買いましたけど、これって多くありません?」
ぱらり、と長くつややかな髪を後ろへ払って、純子は立花に渡されたメモを横目に指折った。
「会長、志郎さん、あたし、……と、あとシゲルで四人でしょう?余ったらどうするんです?」
「あ?……いいんだよ、多くたって」
立花はうるさげにパイプをふかした。
「そういうもんはな、来るかもしれん奴の分まで考えて買っとくもんなんだ。余ったら俺と志郎で食っちまうから、心配せんでいい」
「はいはい。……あら、志郎さんどうしたの?」
風見は彼らしくもなく茫然とした表情で、まじまじと立花を見つめていた。
「なんだなんだ、俺があいつの正月の心配をするのがそんなに意外か、ええ?」
「いや、そうじゃないんですが、……その」
言いかけながらも、風見はどんな顔をしていいか良く判らずにいる。
「いいじゃあないか。頭数多い方が賑やかでいいってもんだ。もし嫌がらないなら、こっちはいつでも準備万端整ってるって言っとけ」
「おやっさん……」
「何て顔しやがるんだ、志郎」
気まり悪げに立花はパイプを離し、じろりと風見を見た。
風見を立花に引き合わせたのは本郷猛である。
この自分の父親と同じくらいの年でありながら青年のような夢を未だに抱き続けている、時として頑固で口煩い後見人が、しかし今なお風見の先輩達から慕われ続けている理由を、その時風見はいたい程感じていた。
両親と妹をデストロンに惨殺され、天涯孤独となった自分に向けてくる気のおけない優しさを、ほとんど面識もないデストロンの元科学者に対しても向けようとするそのおおらかさ故に、風見達もまた人間の身体ならぬ身である秘密を共有する人間としてたのんでいるのかもしれない。
「……ちょっと出てきます」
風見はヘルメットを取った。
冬の日暮れは早い。
立木の間に沈もうとする朱くゆらめく太陽を、目を細めて眺めながら結城は息をついた。
「……どうやらまいたな」
結城と岩崎はセントラルスポーツ店のある商店街の近くの雑木林に身を潜めている。しかしそう呟いたのは岩崎に聞かせる為で、結城の耳はまだ油断なく辺の気配をきいている。
二人は昨日から丸一日、あてのない逃避行を続けていた。デストロンの追討隊と、その間結城は二回程拳を交えたが、まだその右腕にものをいわせるには至っていない。
その事が、ひそかに結城には気にかかっていた。
「……脱走なんかしなければ良かった……」
ぽつりと岩崎が呟く。それは初めての言葉ではない。結城もことさら力づけることばを考えるでもなく、ただ黙って感覚を研ぎすましている。
岩崎のそれに続く言葉も決まっていた。
「君さえデストロンに戻ってくれるなら、僕も黙って帰るんだが……」
「―――岩崎」
流石にこちらは何度聞いても、黙って聞き流す事はできない。
「何回も同じ事を言わせるな。僕は死んでも、もうデストロンへ戻る気はない。たとえこの命尽きようとも、デストロンと戦うと誓ったんだ」
「だから」
岩崎は泣きそうな目で見上げる。
「君さえ帰ってくれれば、科学者グループにはまたヨロイ元帥に対抗する力も生まれる……ヨロイ元帥さえ倒せば、また全部元通りになるじゃないか」
「もう元には戻らないものもあるんだ、岩崎」
その声は落ち着いていたが、どこか冷たさを帯びていた。見上げる岩崎と目を合わせようとはせず、結城は遠いところを見つめている。
「デストロンの科学は、人類の平和の為には使われない……それを知ってしまったからには、僕はもうデストロンの為に動く事はない。もうその話はしないでくれ」
まだ何か言いたげな岩崎を軽く睨んで、それから結城はふと耳をすます。
(来ている……)
もとより完璧に逃げおおせたつもりもなかった。十メートル程離れたところに二人―――三人と、デストロン戦闘員がいるのがわかる。
だがそれ以上近づいてこようとはしない。
(何故だ……何故襲ってこない。まるで戦う為ではなく、僕達を監視しているようだ……)
デストロンの脱走者となって以来、結城はそれこそ息もつかせぬ程の追撃を躱し続けている。眠る時ですら隙は見せられない。そんな日々を送ってきた結城には、この一日のデストロンの動きがどうも解せないのである。
確かに時折攻撃は仕掛けてくるものの、その討手の形容しがたい甘さが結城の眉をひそめさせる。
(まさか相手が腕に自信のない岩崎と見くびった訳でもあるまい……大体僕が一緒に動いている事位、既にデストロンは知っている筈だ)
そしてそれはひそかな疑念を心におとす。
(デストロンは本当に、岩崎を抹殺しようとしているのか……?)
「……結城?」
いぶかしげに見返され、結城はいつしか岩崎を険しく見つめている自分に気づいて慌ててその視線を和らげた。
「移動するぞ、岩崎」
「え?」
「今のうちに屋根のあるところへ動いておかないと、もうじき雨になる」
頬に触れる大気は切るような冷たさの内に、細かい霧のような水気を含んでいる。
「アパートまで走れるか」
「……またあそこへ帰るのか?」
ためらいがちに岩崎が聞き返す。
今朝三時、結城のアパートで眠りかけたところをデストロンに奇襲され、そのまま今に至っている事を思うと、岩崎としてはもう一度戻るなど考えたくもなかった。
「あいにく僕には他に帰るところはない」
結城はふいと突っぱねた。既に戦いの日々も長い結城にとってこの一日は「大した事はない」部類だが、岩崎がこの慣れない逃避行に次第に気弱になっていくのが結城には手にとるように解る。
「行くぞ」
不承不承岩崎が頷くのを確かめて、結城は雑木林から走り出た。
運が良ければ、位のつもりだったから捲けるとは思わなかったが、とにかく追手の人数位は掴んでおきたい。結城と岩崎の後を追って慌てて走り出す戦闘員の足音を、結城は背中で数えた。
(四人……五人……いや、もっといるな)
「―――結城!」
不意に眩しい光に視界をふさがれ、結城は思わずその場に立ちすくんだ。それがオートバイのライトと気づくのに、一瞬の間があった。
そして慌ててブレーキをかけたオートバイの主も、ヘルメットをとる。その下には結城が瞬間ためらう程、ふっと遠く感じた正義の味方の端整な容貌があった。
「風見……」
無意識のうちに、すっと身体がひけた。警戒に顔がこわばっているのが自分でもわかる。
「……結城」
それに対して風見のまなざしは安堵の色をたたえている。どうやら無事らしいな、と思い、そしてふとその視線が結城にぶつかりかけて止まった岩崎を捉えた。
「……風見志郎!」
小さく悲鳴のように叫んで背にしがみついてくる岩崎を、反射的に結城は腕を上げて後ろに庇っていた。岩崎に―――デストロンに属する者にとって、風見志郎とはどれだけ憎んでもあきたらない宿敵の名である。
風見の切れ長な目がいぶかしげに細められた。元々勘は鋭いほうである。
「結城」
事を問いただそうと向けられるまなざしを、かろうじて結城はかわした。目を逸らしたまま、二、三歩後ろへ下がる。ヘルメットを置き、ハリケーンのシートから下りようとして風見の目が結城から離れた途端、結城はぱっときびすを返して岩崎の肩を引いていた。
「―――走れ!」
いきなりの事にたたらを踏む岩崎の肩を無理に引き戻し、結城は今し方走ってきた道をそのまま走り出した。
「結城!」
風見の声が結城の背をうつ。
その声に追い立てられるように走る結城の耳に、予想外の展開に慌てふためく追手がばらばらとまた走り出すのが聞こえた。こちらも振り切らなくては、と細い路地へ走り込みながら、結城は我知らず一瞬だけ、助けを求めるようにちらりと風見を振り返っていた。
そして一方、瞬間のためらいが風見の足を鈍らせた。走るにはいかに風見とはいえ明らかに出遅れ、ハリケーンで追うにも細い路地へ入り込まれてしまってはどうにもならない。
風見は苛立たしげに爪先で足元を蹴り、ヘルメットを取ったまましばらく結城の消えた闇を見つめていた。
(何故だ……)
自分を見上げた時、結城は初めて出会った時と同じ瞳をしていた。追い詰められて牙をむき、誰であろうと寄せつけるまいと頑なに拒もうとするあの瞳の色を、風見はまだ目の前に在るように思い出せる。そしてそれはほんの一瞬の事ではあったが。
(……敵を見る目で俺を見ていた……)
まるで―――デストロンのように。
そう思った途端、風見の思考は別の方向へとんでいた。
(あの男……)
自分を見た途端、結城の背に怯えたようにしがみついていった若い男。
(俺の名を知っていた。そしてあの反応からすると、デストロンか……?)
そう考えるより他はなさそうだった。
(だが、何故だ?結城がデストロンと一緒にいて)
ヘルメットを掴む指先に、僅かに力がこもる。
(しかも、追われていた……)
結城がデストロンの刺客につけ狙われている事は風見も知っている。
だが今、結城ともう一人の男にかかっていた追手は、それとはどこか空気が違うのも風見は敏感に感じ取っていた。結城をして一瞬たりとも気の抜けない緊張の内に二十四時間身を置かせる程執拗ないつもの追手ならば、結城が風見を認めて張り詰めた気を解いたあの瞬間を逃す筈はない。
(追われていたのはあの男か?だが、そうならば……)
風見は頭を振り、考えるのを止めた。考え事をするには解らない事が多すぎた。
(とにかく結城を見つける事だ……)
ヘルメットをかぶり直し、ハリケーンのエンジンをふかす。あまりにも心もとない数の心当たりの場所を思い浮かべ、風見はふっと遠くを見つめる目になった。
結城と岩崎は眼下に住宅街を臨む高台の上まで来ていた。
頭上にも足元にも、幾百という星々と灯の光が散っている。
「……ここまで来れば、大丈夫か……?」
息を切らしながらおどおどと問いかけてくる岩崎には答えずに、結城は黙って住宅街を見下ろしていた。
(どうして僕は逃げてしまった?)
おそらくあの行動に一番驚いているのは結城自身である。
既に迷いを振りきり、ためらいなくあの目を―――どこまでも正義を貫いて揺るぎないあの目をまっすぐ見つめ返せるだけの意識はできた、と自分では思っていたのだ。負い目こそあれ、もはやデストロンと戦う覚悟を決めた以上、何の惑いも持つまい、と。
だがあの瞬間。
はっきりと風見を避けた自分に、結城は気づいている。何故かは解らない。しかしはっきり解っているのは、あの時風見が初めて会った時よりも遠く見えた事―――そしてその距離をつくったのも外ならぬ自分である、という事だけである。
(……岩崎)
あの時確かに結城は、風見のまなざしから岩崎を庇っていた。
(僕は……デストロンに居た頃に戻っていたのか?)
その考えは結城を慄然とさせる。
だが、それはきっと確かな事なのだった。結城をたじろがせた、あの距離を生んだもの―――それはデストロンによって刷り込まれた本能的な敵意そのものである。
デストロンの敵、仮面ライダーV3に対する敵意。
不意に笑いがこみあげてきた。
デストロンの正体を知り、追われる身となった以上既にデストロンではあり得ず、しかしデストロンの一員としての感覚が呼び覚まされた為に風見に反射的な敵意を抱いてしまう。そんな不安定な状態を、結城は冷え冷えとするような絶望感と共に味わっている。
(……所詮……一人という事か)
とうに決めた筈の覚悟ではあったが。
結城はコートの肩をそびやかせて襟をたて、吹き抜ける冬の風に頬をこわばらせた。
「……結城」
どん、と肩をうちつけるように岩崎が身体を寄せざま見上げてきた。
「あれが風見志郎なんだな」
「そうだが……?」
「ふうん」
並んで眼下の街並を見下ろしながら、岩崎は呟いた。
「まるで人間みたいだな」
結城のまなざしが凍った。
「何……?」
「あれ、だろ?だって仮面ライダーV3なら改造人間じゃないか。でもあれなら、ちょっと見た目には普通の人間と……」
岩崎はその先を続ける事ができなかった。結城の腕がその肩を捕えて、高台の事故防止柵に押さえつけたのだ。
「結城……?」
「それ以上言ってみろ」
その声は低かったが、まなざしはどこか哀しげだった。
「数多くの改造人間を作り出してきたお前だ。お前から見れば確かに改造人間は実験対象に過ぎない……それを咎めはしない。だが」
押さえていた手を放し、左手を右の袖口に入れて探り始める結城をいぶかしげに、まだおびえた目で岩崎は見ていた。
「……その先を言うなら、これを見てから言え」
僅かな震えと共に身体の内に接合の外れるのを確かめ、結城はそれをまっすぐ岩崎の目の前に差し出した。
肘から先の、結城の右腕である。
「……あ……」
背が柵に当たって軋んだ音をたてた。岩崎は息をのみ、目を大きく見開いた。
今迄手首まではコートに、そしてその先は手袋で隠していた為に気づく訳もなかったが、ほの暗い月明かりの下でさえその腕は明らかに、人間の皮膚とは異なる外装を呈していた。
「……解ったな」
流石に後味は悪そうに、結城はゆっくりと右腕をコートの内に戻した。
「この腕は、ヨロイ元帥に奪われた僕の右腕の代わりの機械の腕だ。いわば僕も、風見と同じ改造人間……というところだろうな、お前から見れば」
「結城」
何と言って良いか解らない、というように首を振る岩崎に自嘲的な微笑をちらりとみせて、結城はふと近くに再び追手の迫っているのを感じた。デストロン戦闘員の気配である。それが風見でない事に何故かほっとしている結城に、それからまた少し考えたらしくおずおずと問いかけてくる岩崎の声が届いた。
「結城……でもそれならどうして、君は風見志郎から逃げたんだ?」
「岩崎」
結城は手袋を嵌め直しながら、静かに言った。
「もし僕がデストロンに捕まるか、殺されるかしてお前を守り切れなくなったら、迷わず風見のところへ行け」
今はもうその瞳は、どこまでも柔らかい光をたたえている。
「彼はデストロンにとって最大の強敵である以上に、デストロンに追われる者にとっては最も心強い味方となる……たとえそれがかつてはデストロンに居た者であってもだ。それは僕が保証する」
「結城……」
不安げに見上げる岩崎と目を合わせずに、結城はゆっくりと近づいてくる追手との距離をはかった。
「―――岩崎圭一郎め……だいぶ参ってきたとみえる」
ほの暗い司令室で、追討隊の報告を受けたヨロイ元帥はひとりごちた。
「そろそろ良い頃合か……?」
その声は誰一人聞く者もない闇の内に消える。ヨロイ元帥は唇の端を歪めて微笑をつくり、さてどちらに狙いを絞るか、と思案した。
(元々は結城丈二を釣る餌のつもりだったが……うまくすると風見志郎がかかってくるやもしれぬ)
ゆるり、と兜の奥で思いを巡らすように宙を見据えるまなざしに、やがて妖しい光が満ちる。
決心するのにさほど時間はかからなかった。
感情だけではかるならば結城丈二を先に仕留めてしまいたいのはやまやまだが、ライダーマンに変身するとはいえ所詮は普通の人間くずれである。大体この作戦自体、少々大仰に過ぎたかもしれないのだ。風見志郎さえ始末すれば残る結城丈二などいつでも簡単に片付けられよう、とヨロイ元帥は冷酷をもって鳴るデストロン大幹部にたちかえって考えてみる。
(……それに、な)
その横顔に浮かんだのは、昏い喜悦の表情だった。
(己の守った友人の裏切りで風見が殺される事になると知った時のあやつの顔、さぞかし良い見物となろう……)
岩崎は灯もつけず、部屋の隅にうずくまって息を殺している。
結局は結城のアパートへ再び転がり込む形になった岩崎だった。その結城は買い物に出ている。できれば片時も結城から離れたくない、というのが岩崎の本心だったが、一日の逃避行はもう岩崎を動けない程疲れさせていた。
「……すぐ戻る」
そう言いおいて、結城は出掛けていった。
二人がここへ戻ってくるまでの間に、また結城はデストロンの追討隊と一戦を交えている。二、三人逃しはしたが、そうそう続けて襲ってくる事も今のところなさそうだから、少し位は一人でいても大丈夫だろう、というのが結城の読みである。
そう言われはしたものの岩崎の不安に変わりはなく、岩崎は時折ドアの外を行き過ぎる足音に耳をそばだてながらじっと身体を固くしている。
(何でこんな事になっちまったんだ……)
岩崎は膝を抱いた両腕の内に頭を埋めた。その耳にオートバイのエンジン音が近づき、窓の外で一瞬スピードを落とすのが聞こえたが、風見が結城と自分を探しているなど思いもよらない岩崎は気にも留めない。部屋に灯のついていないのを確かめたハリケーンが再び走り去っていく。そのエンジン音を遠く聞きながら、岩崎は小さく呟いていた。
「いつまで……こんな事を続けるんだ……」
その問いをぶつける度に結城は静かに岩崎を見据え、デストロンが滅びるまでだ、と答える。
(その為に僕は……風見は戦っている)
と。
しかし本当にデストロンが滅ぶ日など来るのだろうか。
そう思う時、引きずり込まれるような絶望感が岩崎を襲う。たまたま不幸にしてデストロンと関わってしまった市民ならいざしらず、デストロンの一員であった岩崎はその組織の強大さをおぼろげながら知ってしまっている。
(たった二人で立ち向かってどうなると言うんだ……勝てる訳がないじゃないか)
デストロンに戦いを挑むなど、思いも及ばない岩崎である。
大学で黙々と研究を続けて周囲と相容れる事を知らず、半ば誘拐される形でデストロンの一員となった後も研究さえ続けられるなら、と受け入れてしまった岩崎にとって、世界とは彼の研究室以外にはない。
デストロンを脱走する決意を固めさせたのは、結城が居なくなった後やはり優秀な科学者である岩崎をヨロイ元帥がうとみ始めているという噂が流れた為と、結城に語ったように改造人間達の命令に従うままの研究に我慢がならなくなった為だったが、それ以上の事を考えていた訳ではなかった。
他にどうしようもなかった、と自分に言い聞かせながらも、まだ岩崎はどこかで逃げを求めている。
正直なところ、岩崎は生命と研究の自由が保証されるならデストロンへ戻っても良いとすら考えているのだった。デストロンと同じ位の研究施設を備えている場所を他に知らないだけに、惜しい、と思ってしまうのも事実である。結城と違い、生体改造にかかわっていた岩崎はデストロンという組織の本質を知らない訳ではなかったが、たとえ世界征服を目論む悪の組織であろうと、所詮自分を認めない世界であるならばその行く末など岩崎の関知するところではなかった。
(結城が……一緒に戻ってくれるなら……)
もう幾度となくはねつけられた考えを未練がましく心に浮かべて、岩崎は溜息をついた。
脱走して今なおデストロンの追撃をかわし得ている唯一の存在―――そして自分を守って戦ってくれる唯一の存在とたのんで、結城を頼る事にした岩崎ではあったが、もしかして万が一にでも結城を翻意させる事ができれば、と考えなかったとは言えない。
岩崎は結城がデストロンを脱走した時の詳しい事情を知らない。が、それを人づてに聞いた時の衝撃は今もはっきりと思い出せた。
結城は岩崎にとって友人であり先輩であると同時に、憧れの対象でもあった。優れた科学者でありながら鍛え抜いた身体をもち、常に落ち着いた態度を誰に対しても崩さない青年科学者を、岩崎はひそかな憧れと共に見つめていたのだ。
しかし実際に結城と再会し、その決意の固さを目の当たりにして岩崎は途方に暮れていた。
おそらく岩崎には、結城をデストロンへ呼び戻す事はできないだろう。
(……僕は一体どうしたらいいんだ)
鬱々と考えながらカーテンのかかった窓を見やった。
その瞬間、岩崎の身体は凍りついたように動かなくなった。
カーテンにくろく影が落ちている。そのがっしりとした鎧のシルエットを、岩崎は良く知っている。
叫びたいのに声が出ない。逃れる術など無い事を知りながら岩崎は壁にひたすら身体を押しつけ、速くなる息を抑えようとした。
「―――久しぶりだな、岩崎圭一郎」
ゆっくりとカーテンをはらいのけ、ヨロイ元帥は窓を越えて室内へ降り立った。ふわり、とマントが夜風に舞う。
「何と言うざまだ……怖くて挨拶もできぬか?」
身体がすくんで動けない岩崎に近づき、不意に左腕をぐいと突き出す。左手の鉄球の棘が岩崎の頬をかすめ、岩崎はひっ、と悲鳴とも息ともつかない声を上げた。
「ふん……相変わらずの臆病者めが」
目を細めて冷ややかに笑いながら右手で軽く岩崎の顎をとらえ、壁に沿う形で立ち上がらせる。
「よくも貴様のような腰抜けが、脱走などと大それた真似をしでかせたものよ……デストロンの掟を知らぬ訳でもあるまい?」
岩崎の頬に押し当てた鉄球にゆるゆると力をこめ、その頭を押さえつける。岩崎の顔が恐怖にひき歪むのを心地よげに眺めながら、ヨロイ元帥は低く楽しげに囁いた。
「だがひと思いには殺さぬ……他の科学者連中への見せしめの為にもな。耳をそぎ、目をくり抜き、四肢を切り落とした上で一寸刻みに切り刻んでくれるわ」
「……た」
絞り出すような声が岩崎の喉から漏れた。
「……助けて下さい……何でもするから……何でも」
ヨロイ元帥の目が、面白げな表情をつくる。
「何でも、と言ったな」
岩崎はしがみつくように、しかしためらいがちに頷いた。
「―――では」
つと顔を近付け、ねめつけるように岩崎を見据えてヨロイ元帥はゆっくりと言葉を区切った。
「最後にもう一度だけ、デストロンの為に働いて貰おう。それさえやり遂げれば、殺さぬばかりではない。貴様を自由の身にすると約束してやろう。良いか、良く聞け……」
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